登壇後、「客席に知っている顔が何人かいるので緊張します…」と苦笑しながら話し始めた太田監督。はじめに、本作を制作することになった経緯について会場の皆さんに説明した後、公開初日に舞台挨拶のゲストとして登壇してくださった出演者の宮城正吉さんと今井ユキエさんのお二人の話を中心に語っていきました。
舞台挨拶の際、「レポートが大変だった」と語った宮城さんですが、小学生の時から農作業の手伝いをさせられていたため、実際には小学校の学力も身についていないという厳しい状況からのスタートだったそうです。太田監督と最初に出会ったときには、「私のことはあまり撮らないで」と態度も硬く、話しかけてほしくなさそうだったとのこと。ところが、もう一人の同級生の方が去り、生徒が宮城さんただ一人になるという事態が起こってからは、先生とマンツーマン状態で息がつまることもあってか、「授業が難しいなあー」といった愚痴を太田さんにこぼすなど、少しずつ心を開いてくれるようになったそうです。さらに、(もう一人の出演者である)峯永さんが同級生になってからは、お互いに妻・夫を介護しているという共通点もあり、峯永さんと二人で支えあって、宮城さんの態度がよりいっそうほぐれていったと語りました。
取材中に宮城さんの話を聞きながら、太田監督自身、そのつらい経験に思わず涙することもあったそう。「(つらい話をさせてしまって)自分を冷たい人間のように感じることもあったが、自分が聞いている宮城さんの話が、他の誰かにとって教育の機会につながればという思いだった」と、映画を通じて、多くの方々に通信制中学の存在や義務教育の大切さについて知ってほしいとの強い思いを語りました。
また、もう一人の出演者である今井ユキエさんについても、「それまで一度も学校に行ったことがなかったが、お子さんの一人が、一度でいいから母に学校生活を経験させてあげたいと思った」ことが、入学のきっかけになったと紹介しました。今井さんが授業中、納得したときに発していた「なるほど」という言葉に先生方が胸を打たれていた、というエピソードについてあらためて語りながら、「今井さんは、もし30代、40代のときにこの学校に出会っていれば、看護師になるという夢をかなえたかった、と話していました。『まなぶ』には、いくつになってもやり直すことができるというメッセージが込められている反面、やはり、早いに越したことはない。宮城さんも、電話で話した際、(カメラの前では語らなかったが)“若い人に、若いうちに勉強してほしいということを伝えたかった”と語っていた。若いうちにしか取り戻せないものもある」と、若い人たちにとっても「学び直しの場」が、たくさん用意されることの重要性を訴えました。
この日の会場には、映画にも登場した先生方も来場されており、太田監督が紹介すると、会場からは大きな拍手が送られました。
舞台挨拶終了後、たくさんの方が残ってアンケート用紙を一生懸命記入してくださるなど、劇場は興奮さめやらぬ雰囲気に包まれました。(一枚にはおさまりきらず、他の紙も使って何枚も書いてくださった方も!)
ご来場くださった皆様、どうもありがとうございました!
映画『まなぶ』、新宿K's cinemaでの上映は、いよいよ残りあと5日です。皆様のご来場をお待ちしています。
告知がない日でも監督舞台挨拶がある場合があります!
▽映画『まなぶ 通信制中学 60年の空白を越えて』新宿K’s cinemaにて4/14(金)まで上映中!連日10:30〜
http://www.film-manabu.com/